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Research

 複雑なシステムを数理モデル化し,新たな制御理論を構築することが私たち井村研究室の目的です.私たちは近年注目される社会システムである,ライドシェア(相乗り)システムの数理的な枠組みの構築に取り組んでいます.ライドシェアでは,車の持ち主と相乗りしたい人という,2グループのプレイヤ間のペアを決定する問題があります.このとき誰と誰が相乗りのペアを組むかによって,各プレイヤの効用(好ましさ)が異なります.この状況下では,システム管理者が各プレイヤの効用情報を受け取り,ペアを適切に定めることによって,社会効用(全プレイヤの効用の総和)を最大化することができます.

 しかしながら,個々のプレイヤがシステム管理者の決定したペアを受け入れるかを考える必要があります.もしプレイヤ同士が直接やり取りを行い,システム管理者が決めたペアよりも"互いに"効用が高まるペアが存在した場合,勝手にペアの組み換えが起こる危険性があります.ゲーム理論におけるマッチング理論では,このようなマッチング(ペアの組み方)を不安定と呼び,与えられた効用情報に対して安定なマッチングを得るための理論を構築してきました.しかし,既存のマッチング理論では社会効用が最大となるマッチングは必ずしも安定でないために,安定性を保証するために社会効用が犠牲になることがあります.
 そこで私たちの研究では,効用が金銭などでプレイヤ間で移動可能であることを前提に,不安定な社会効用最大マッチングに対して,各プレイヤへコストやインセンティブを与える"システム管理者による交渉"を行うことで安定化する理論を提案しています.ここで重要な点は,各プレイヤの効用の移動をゼロサムで行うことによって,最大社会効用を保ったまま安定化できるという点です.学部生では効用の情報がシステム管理者に対して一定値として提出される場合の定式化,提案を行いました.

 修士課程ではさらなる理論の拡張に取り組んでいます.例えばライドシェアにおいては,あるペアを組むとき,待ち合わせ時刻に効用が依存する状況がより自然です.このような状況下では安定性の概念を新たに定義する必要があり,システム管理者による交渉も拡張しなければなりません.修士1年では,効用の情報がペア間のパラメータに依存した関数の形で与えられたとき,安定な社会効用最大マッチングを得るための理論を構築しました.

 今後の展望としては,プレイヤが動的に参加,離脱する状況下へ理論を拡張し,全ての時刻において安定性を保証しながら,より社会効用を高めライドシェアリングを効率よく運用する仕組みを構築したいと考えています.

Kazuma Takeuchi,

Tokyo Institute of technology

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